『キリンの人工哺育はなぜ揉めるのか』を出版しました
このたび、私の初めての著書となる
『キリンの人工哺育はなぜ揉めるのか――正論のぶつかり合いで止まる組織を、どう動かすか』
が出版されました。
長い間、頭の中にあったことを、一冊の本という形にすることができました。
出版に至るまで、ご協力いただいた皆さまに、この場を借りて心より御礼申し上げます。

なぜ「キリンの人工哺育」が組織論になるのか
本書のタイトルを見て、
「キリンの人工哺育の専門書なのだろう」
と思われる方もいるかもしれません。
もちろん、動物園の現場で起きる人工哺育についても書いています。
しかし、この本で私が本当に書きたかったのは、キリンそのものの話ではありません。
動物園で働いていると、
「動物のために、こうするべきだ」
という意見がぶつかることがあります。
どちらも真剣に動物のことを考えている。
どちらの主張にも、それなりの根拠がある。
だからこそ、簡単には決着しません。
そして、議論を重ねるほど、組織が動かなくなっていくことがあります。
これは、動物園に限った話ではないのではないか。
私は17年間、動物園の現場で仕事をする中で、次第にそう考えるようになりました。
会社でも、行政でも、病院でも、学校でも、専門家の集まる組織でも、
「みんな真面目に仕事をしているのに、なぜか組織が前に進まない」
ということがあります。
その原因は、個人の能力や努力不足ではなく、組織の構造そのものにあるのではないか。
この疑問が、本書を書くきっかけになりました。
「正しいこと」だけでは、組織は動かない
私は獣医師として動物園の現場に立つ一方で、中小企業診断士として、さまざまな組織や事業について考える仕事もしてきました。
そこで気づいたのは、
「現場」と「経営」は、決して別のものではない
ということでした。
現場には現場の正しさがあります。
経営には経営の正しさがあります。
専門家には専門家の正しさがあります。
しかし、それぞれが自分の「正しさ」を主張するだけでは、組織は前に進みません。
むしろ、全員が真剣であるからこそ、対立が深くなることさえあります。
では、どうすればいいのか。
本書では、動物園で実際に経験した出来事を題材にしながら、
・個人の頑張りに依存する組織から、仕組みで動く組織へ
・「あれもこれも」から、本当に優先すべきものへ
・専門家同士の対立を、どう乗り越えるか
・正論だけでは解決できない問題を、どう前に進めるか
・現場で感じた「違和感」を、どう組織の改善につなげるか
といったことについて考えています。
動物園で働いた17年間から
私は2024年3月まで、17年間にわたって動物園で獣医師として働いていました。
その間、さまざまな動物と出会い、多くの素晴らしい飼育員や獣医師、技術者、行政職員などと一緒に仕事をしてきました。
一方で、動物園という組織の中で、
「なぜ、こんなに一生懸命働いている人たちが集まっているのに、うまくいかないのだろう」
と感じることもありました。
本書にも書いていますが、
ペリカンの糞に悩まされる現場。
暴走するカンガルーへの対応。
動物の命をめぐる難しい決断。
そして、キリンの人工哺育をめぐる意見の対立。
一見すると、どれも動物園の特殊な出来事です。
しかし、そこにある「組織が動かなくなる理由」を考えていくと、私たちが普段働いている職場にも通じるものが見えてきます。
だから私は、この本を単なる「動物園の本」にはしたくありませんでした。
動物園という少し特殊な現場を入り口にして、組織で働くということについて考える本にしたい。
そう考えて書きました。
こんな方に読んでいただきたい本です
本書は、動物園に関心のある方だけではなく、
・組織の中で「なぜ話がまとまらないのか」と感じている方
・正論を言っているのに、なぜか周囲と衝突してしまう方
・会議を重ねても、なかなか物事が前に進まない組織で働いている方
・現場の頑張りだけに頼ることに限界を感じている方
・専門家同士の意見の対立に悩んでいる方
・動物園という職場の裏側を知りたい方
・組織づくりやマネジメントについて考えている方
などに、ぜひ読んでいただきたいと思っています。
特に、
「うちの組織も、なんだかおかしい」
と感じながら、その違和感をうまく言葉にできずにいる方に届けば嬉しく思います。
最後に
本を書くということは、思っていた以上に大変な作業でした。
しかし、これまで自分が経験してきたこと、考えてきたことを文章にしていく中で、自分自身にとっても「なぜ自分はこれまで、組織についてこれほど考えてきたのか」を振り返る機会になりました。
動物園で17年間働いた経験。
獣医師として仕事をしてきた経験。
そして、中小企業診断士として経営や組織について学んできた経験。
一見すると別々に見えるこれらの経験が、今回、一冊の本につながりました。
この本が、読んでくださった方にとって、
「自分の職場にも、同じことが起きているかもしれない」
「少し見方を変えてみよう」
「まずは小さく何かを変えてみよう」
と思うきっかけになれば、著者としてこれ以上嬉しいことはありません。
よろしければ、ぜひお手に取ってみてください。
『キリンの人工哺育はなぜ揉めるのか――正論のぶつかり合いで止まる組織を、どう動かすか』
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