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空の検索で27件の結果が見つかりました。

  • 頑張るほど疲弊する組織を「動く組織」へ。ボトルネックを特定し、仕事の流れを再定義する。【前編】

    【前編】「忙しいのに、進まない」のはなぜか? ―― 現場の空気を軽くする『ワークフローリデザイン』の思想 こんにちは。 これまで私は、数多くの動物園や動物病院といった、一分一秒を争う「命の現場」を見てきました。そこで働く方々は皆、使命感に燃え、懸命に動いています。しかし、同時にこう漏らすのです。 「なぜこんなに忙しいのに、状況が良くならないんだろう?」 その原因の多くは、個人の能力不足ではありません。長年の「古い習慣」と、後から増え続けた「新しい業務」が整理されずに積み重なり、現場が渋滞(ボトルネック)を起こしていることにあります。 「紙と消しゴム」で引く、新しい線 私は48歳になり、改めて現場を客観的に見つめ直す時間を持ちました。そこで痛感したのは、今の現場に必要なのは高価なITツールではなく、「一度立ち止まって、仕事の線を整理し直すこと」だという確信です。 私は、最新の経営理論を振りかざすコンサルタントではありません。 現場を歩き、皆さんの手の動きを追い、使い古されたメモ帳と消しゴムで「今の本当の動線」を書き出す。そして、そこにある矛盾や無駄を削ぎ落としていく。 それが、私の提案する「ワークフローリデザイナー(業務整理リデザイン)」としての仕事です。 現場の「空気」は、仕組みで変えられる 「雰囲気が悪い」「余裕がない」という職場の背景には、必ずと言っていいほど「誰がどこまでやるのか不透明」「想定外の事態にルールがない」といった仕組みの不備が潜んでいます。 後編では、8〜12週間という期間で、どのように現場の「渋滞」を解消し、そこに流れる空気を軽くしていくのか。その具体的な処方箋についてお話しします。

  • 現場の経験を、制度につなぐ。畜産経営が「話せない」「伝わらない」で止まってしまう理由と、経営の橋渡し役という選択。

    なぜ、畜産経営の話し合いは噛み合わなくなるのか? こんにちは。私はこれまで、畜産・動物医療・動物園・教育現場など、 「動物の専門性」を軸にした現場 に長く関わってきました。 最近、畜産農家の方や行政・普及の方から、こんな言葉を聞く機会が増えています。 「ちゃんと相談しているはずなのに、話が前に進まない」 「制度の説明は受けたが、正直よく分からない」 「思いはあるが、どう伝えればいいのか分からない」 これは、 誰かの能力不足ではありません。 問題の正体は「言語の断層」です 畜産経営の現場には、 経験 勘 身体感覚 現場特有の制約 といった “体温のある知恵” があります。 一方で、行政・JA・金融機関には、 制度 予算 リスク 公平性 という “全体最適の論理” があります。 どちらも正しいのです。 しかし、 使っている言葉が違うということなのです。 この「言語の断層」がある限り、 農家の話は「要望」「感情」に見え 支援側の話は「建前」「机上論」に聞こえる という不幸なすれ違いが起こります。 私が「畜産経営の橋渡し役」をやろうと思った理由 私は獣医師として現場に立ち、同時に中小企業診断士として経営や制度の世界も見てきました。 その中で強く感じたのは、 「これは指導の問題ではない。通訳がいないだけだ」 ということでした。 畜産農家は、 説明が下手なのではありません。 行政や支援側も、 冷たいわけではありません。 ただ、 互いに“相手に伝わる言葉”で話していないだけ なのです。 畜産経営通訳サポートとは何をするのか 私は、判断や指導を行いません。代わりに、次の役割を担います。 ① 農家の話を「経営の論点」に整理する ぼやき → 課題 不安 → リスク 希望 → 選択肢 ② 行政・支援側に伝わる形に翻訳する 制度にどう当てはまるのか 何が判断材料になるのか どこが論点なのか ③ 話し合いが成立する場をつくる 脱線しない 感情的にならない 「結論が出る」打ち合わせにする この支援が向いているのは、こんな場面です 補助金・設備更新・事業見直しを考えている 行政や金融機関との話し合いが控えている 自分の考えをうまく言語化できない 「相談しているのに前に進まない」と感じている 提供するのは「答え」ではなく「通じる状態」 このサポートのゴールは、 私が前に出ることではありません。 農家の言葉が正しく理解され 支援側の意図が正しく伝わり 双方が同じ地図を見て話せる その「通じる状態」をつくることです。 最後に 畜産経営は、一人で抱え込める時代ではなくなりました。 しかし同時に、 誰かに丸投げできるものでもありません。 だからこそ必要なのが、現場と制度の間に立つ「通訳」という役割です。 もし、 話が噛み合わない 会議が疲れる 相談しても前に進まない そんな感覚があれば、一度、話を整理するところから一緒にやりましょう。

  • 外部講習に頼る前に。自社の現場課題を「最高の教材」に変える、実践型教育プログラム。【後編】

    年間385コマの授業を担当する専門学校講師が提案する、現場直結型の教育デザイン 【後編】「学び」を「文化」に変える6か月。―― 現場の課題を解決する『専門性ブースタープログラム』の全貌 前編では、学びが現場に還元されないもどかしさについてお話ししました。後編では、私が提供する「専門性ブースタープログラム」が、どのように知識を現場の力に変えていくのかをご紹介します。 専門性を武器に変える「学びの設計図」 私は6か月間、集合研修と現場でのOJT伴走を組み合わせ、以下のステップで「学びの定着」を支援します。 1. 「現場が楽になる学び」のカスタマイズ設計 単なる一般論は教えません。まず現場を徹底的に観察し、「今、何を学べばスタッフの負担が減り、動物のケアが向上するか」という、その職場専用のカリキュラムを設計します。 2. 実践型「ミニ講座」の実施 長時間の座学は現場を疲れさせます。30分~60分程度で、翌日からすぐに使える「実践的なエッセンス」を凝縮して伝えるミニ講座を、ルーティンの中に組み込みます。 3. 現場課題をテーマにした「小さな研究」 スタッフ自身が現場で感じている「なぜ?」をテーマに、小さな改善や研究を伴走型で支援します。自分の学びが環境を変える成功体験こそが、最大のモチベーションになります。 4. メンター制度と「学びが続く文化」づくり 特定の誰かが頑張るのではなく、お互いに教え、高め合う「メンター制度」を設計します。私の役割は、私が去った後も、自分たちで学び、解決し続けられる「文化」を残すことです。 提供価値:置きっぱなしにしない、仕事に効く専門性 このプログラムがもたらすのは、単なる知識の蓄積ではありません。 • スタッフにとっては: 自分の技術が向上し、仕事がスムーズに進む喜び。 • 組織にとっては: 外部に頼らずとも、内部から次々と課題解決が生まれる強さ。 • 動物や学生にとっては: 常に最新かつ最適なケアや教育が受けられる安心感。 専門性を加速させる、伴走者として 知識は、現場の汗と結びついて初めて「知恵」に変わります。 「スタッフの技術を高めたいが、どう導けばいいかわからない」 「専門学校での学びを、もっと現場の即戦力に繋げたい」 そんな悩みを持つリーダーの皆様。48歳、現場を知る「学びのデザイナー」として、貴方の組織の専門性をブーストさせるお手伝いをいたします。

  • 外部講習に頼る前に。自社の現場課題を「最高の教材」に変える、実践型教育プログラム。【前編】

    年間385コマの授業を担当する専門学校講師が提案する、現場直結型の教育デザイン 【前編】「研修は受けた、でも現場は変わらない」 ―― 知識を“置きっぱなし”にしないための『専門性ブースター』 こんにちは。 動物園や動物病院の現場を歩いていると、多くのスタッフから「もっと勉強したい、専門性を高めたい」という声を聞きます。しかし、同時にこうも言われます。 「研修に行っても、戻ってきたら日々の忙しさに忙殺されて忘れてしまう」 「学んだことが、今の現場のどの作業に役立つのかわからない」 研修が「聞いて終わり」のイベントになってしまい、肝心の現場の苦労が少しも減っていない。これこそが、多くの専門職組織が抱える「学びの空文化」です。 知識は「現場の悩み」に繋がってこそ輝く 私は48歳になり、多くの若手や学生の指導にも携わってきました。そこで確信したのは、「何を学ぶか」以上に「どう現場に接続するか」の設計が欠けているということです。 高度な医学知識も、最新の飼育技術も、それが「明日からの作業をどれだけ楽にするか」「動物のQOLをどう具体的に上げるか」に直結しなければ、現場のモチベーションには繋がりません。 専門家の「静かな増殖」を目指して 私が目指すのは、派手な大改革ではありません。 一人ひとりの専門職が、自分の知識を「道具」として使いこなし、日々の業務が少しずつ、しかし確実に改善されていく。そんな専門家が静かに増えていく環境をデザインすることです。 後編では、6か月という期間をかけて、どのように知識を「現場の成果」へと変換していくのか、その具体的なブースタープログラムについてお話しします。

  • 自院の経営状態に不安がある方必見!動物病院業界の財務指標(後編)

    前回は第15次業種別審査事典から、動物病院業界の貸借対照表、損益計算書そして経営分析指標について平均値を確認しました。貸借対照表や損益計算書は動物病院の規模によって値は変わってきます。そこで、今回は経営分析指標の意味を解説させて頂こうと思います。自分の病院の経営状態を推し量るうえで一つの指標になると考えますので、是非ご参考になさってみてください。 総資本営業利益率 動物病院全体:5.9% 動物病院(黒字病院):8.0% 総資本営業利益率は、企業が調達した総資本(自己資本と他人資本)をどれだけ効率的に活用して営業利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は「営業利益 ÷ 総資本」で、この率が高いほど、本業における資本の効率的な運用がなされていると判断できます。 企業の業種により数値は大きく変わりますが、財務省「年次別法人企業統計調査」(令和5年度)によると全産業の平均値は3.5%となっていますので、動物病院業界は利益を生み出しやすい業界であると考えられます。 売上高営業利益率 動物病院全体:5.3% 動物病院(黒字病院):7.5% 売上高営業利益率は、企業の「本業」での収益力を示す指標で、営業利益が売上高の何パーセントにあたるかを示します。計算式は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で、この比率が高いほど、本業が効率的に利益を生み出していることを意味します。 2022年度(2023年経済産業省企業活動基本調査速報)のデータでは、製造業は4.9%、卸売業・小売業は2.8%、情報通信業は8.6%となっています。動物病院業界は収益力が高い業界といえると思います。 自己資本比率 動物病院全体:44.8% 動物病院(黒字病院):50.0% 自己資本比率は、企業の総資産に占める、返済義務のない自己資本(純資産)が占める割合を示す指標です。この比率が高いほど、財務体質が健全で安全性が高いと判断されます。計算式は「自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本(負債 + 純資産)× 100」で求められます。一般的に50%以上あれば良好で、少なくても30%程度あると安心できるとされています。 財務省「年次別法人企業統計調査」(2023年度実績)や経済産業省「企業活動基本調査」(2023年度実績)によると、全産業の平均値は41.8%となっており、製造業(50.8%)や情報通信業(51.5%)は比較的高い傾向があります。一方で、卸売業(42.1%)、小売業(45.9%)、宿泊業、飲食サービス業(42.9%)は比較的低い値になっています。 損益分岐点売上高 動物病院全体:93,259千円 動物病院(黒字病院):105,828千円 最後は損益分岐点売上高についてです。損益分岐点売上高は、売上高と費用がちょうど等しくなり、利益がゼロになる売上高のことです。この売上高を基準に、これを超えれば黒字、下回れば赤字となるため、事業継続に最低限必要な売上高を把握するのに役立ちます。 理解が難しい数字ですので簡単に説明します。まず動物病院が存在するだけでかかる費用があります。地代家賃や人件費などです。これを固定費と言います。この固定費を回収しなくてはいけませんので、そのために営業活動を行います。しかし、営業活動をする以上は薬や資材を仕入れなくてはいけません。これを変動費と言い、営業活動の量が増えれば増えるほど変動費は増加します。この固定費と変動費を合わせたものが総費用になるわけですが、この総費用を上回る売上高を確保できなくては動物病院は赤字になってしまいます。この総費用を上回る売上高のことを損益分岐点売上高といいます。動物病院に限りませんが、全ての業界でこの損益分岐点売上高を上回る売り上げを目指して営業活動を行うことが、黒字経営の目標になります。 その他にもチェックするとよい経営指標は沢山ありますので、自院の経営状態を確認する際に一つの参考にして頂けるとよいと思います。一方で日々の忙しい診療の中でこれら数値を整理し、解釈することは大変なことだと思います。そういった場合は、私たちのような専門家を活用して頂けるとよいと思います。もしご相談があれば、いつでもお問い合わせください。

  • 自院の経営状態に不安がある方必見!動物病院業界の財務指標(前編)

    業種別審査事典という本があるのはご存知でしょうか。今日はその中から、動物病院業界の財務指標について簡単にご紹介したいと思います(出典:第15次業種別審査事典)。データは2022年の動物病院806件の平均になります。動物病院の経営に不安がある方にとって、自院の経営状態を考える1つの指標になると思いますので、是非参考になさってみてください。 貸借対照表(B/S) 単位:千円 全企業 黒字企業 全企業 黒字企業 流動資産 39,919 49,386 流動負債 16,579 18,511 固定資産 53,101 62,527 固定負債 34,833 37,538 純資産 41,694 55,973 総資産 93,108 112,022 動物病院業界は当期純利益が確保できているため純資産は増加傾向であり、企業数や平均従業員数も増加しているのが特徴です。 損益計算書(P/L) 単位:千円 全企業 黒字企業 売上高 102,163 119,619 売上原価 28,217 32,623 売上総利益 73,945 86,995 販売費・一般管理費 68,487 78,072 営業利益 5,457 8,922 経常利益 6,567 10,169 税引前当期純利益 6,117 10,157 売上高も基本的には増加傾向にあるようですので、業界全体としては成長が堅調に推移していると考えて良さそうです。 代表的なK分析指標 B/SやP/Lは病院の規模によって値が大きく変わります。そこで、代表的な経営分析指標を見てみます。これらの値は規模による影響をそれほど大きく受けませんので、病院の経営状態を評価する良い指標になると思います。 全企業 黒字企業 総資本営業利益率(%) 5.9 8.0 売上高営業利益率(%) 5.3 7.5 総資本回転率(回) 1.1 1.1 1人当たり売上高(千円) 11,697 12,201 自己資本比率(%) 44.8 50.0 流動比率(%) 197.0 222.0 損益分岐点売上高(千円) 93,259 105,828 売上高営業利益率などは経営状態を簡便に評価する良い指標になると思いますので、ご参考になさってください。また、動物病院業界の特徴として、設備投資負担が大きくなりやすい傾向があり、過剰投資に注意が必要です。経営体力や収益力に見合う投資かどうか見極めることが重要です。 第15次業種別審査事典に記載されている動物病院の経営改善のポイントとしては ①情報発信 ②M&A ③SDGs ④DX が記載されています。どの業界にも共通するポイントだとは思いますが、当たり前のことを確実に実行していくことがとても大事なことなのだろうと、改めて思いました。 次回は、代表的な経営分析指標の解釈の仕方について解説します。次回もどうぞよろしくお願いします。

  • チーム力で獣医療・動物飼育現場の安全管理能力を高める(第3回/最終回)

    第3回:実践編 — 状況観察とコミュニケーションツール 前回は組織力・チーム力を高めるために、リーダーの役割とリーダーシップを発揮することの重要性について記載させて頂きました。 第3回では、現場ですぐ使える具体策をまとめます。キーワードは「状況観察(Situational Awareness)」と「標準化された対話」です。 状況観察と共有の段階 まず、私たちは業務を行う中で様々な状況に直面し、その過程で多くの情報を得ます。個人が状況観察で情報を得る行為には以下のプロセスが含まれます。 1.           観る(Observe):環境や動物の挙動、機器の状態を積極的に観察する。 2.           解釈する(Interpret):観察した情報の意味を考え、影響を評価する。 ところが、この得られた情報が個人の中で留まってしまい、組織として情報を活用できない場面が多々あると感じています。実際、私もそのような場面に多く遭遇してきました。しかし、組織力やチーム力を高めるうえで、情報をチームで共有することはとても重要です。そこで、個人が得た情報と解釈を以下のプロセスでチームメンバーに共有することが求められます。 3.    個人が周囲やチームに情報を発信する 4.    チームで情報を共有し、状況認識と理解を一致させ、目標を共有していく 以前からよく言われているのが、「報・連・相」です。しかし、この「報・連・相」を個人の役割に帰結させた指示では、何の効力も発揮しないことは多くの方が経験してきたことではないでしょうか。観察したことをチームに伝えない(個人内で終わらせる)という弱点を克服するためには、組織が「伝えやすい・伝えられやすい」仕組みを作る必要があります。 使えるコミュニケーションツール(実務向け) 1) 2チャレンジルール(Two-Challenge Rule) 目的:安全上の懸念を伝え、無視されない仕組みを作る。 運用例:あるスタッフが「これは危険だ」と感じたら、まず1回目に率直に指摘します。それを受けた側の対応が無ければ必ず2回目も同じ主張を行う、というルールです。また、リーダーは2回目の表明を受けたら必ず応答(検討・説明・行動)する義務を設けることも大事な点になります。 場面例(動物飼育) 例えば若手職員とベテラン職員の間で以下のような会話がなされるような場面です。 若手:「このまま外で飼育しておくと熱中症が心配です。」 ベテラン:(反応がない、あるいは却下された場合) 若手:「繰り返しますが、このまま外に置くのは危険だと思います。」 ベテラン:(ツーチャレンジルールだな。この人は何か懸念事項があって言っているんだな。なにがしかの応答をしなくては。) ベテラン職員は、これまでの経験に固執してしまい、その結果アクシデントにつながることがあります。だからこそ、自分のやり方を見直す機会が与えられたときには、積極的に他者の意見を取り入れて検討することが大切です。検討したうえで「やはり自分のやり方が最適だ」と判断するのであれば、それは問題ありません。むしろ危険なのは、経験に頼った思い込みで深く考えずに行動してしまうことです。人はそういう傾向を持つ生き物であることを認識し、意識的に立ち止まって考えることが重要だと思います。 2) CUS法(I am Concerned / I am Uncomfortable / This is a Safety issue) 目的:短い合図で即時停止・再確認を促す。 意味:「C:心配です(Concerned)」→ I am concerned.    「U:不安です(Uncomfortable)」→ I am uncomfortable.    「S:安全問題です(Safety issue)」→ This is a safety issue. 発言例:「ちょっと待ってください。私は心配です。」 組織やチームで上記のような発言が発信されたらチームはただちに作業を止め、状況を確認する、というルールを作っておくことが大切です。作業を一旦止めるフレーズを事前に何か決めておき、そしてそれが発言しやすい状況を作っておく必要があります。 3) チェックバック(Check-back)/ティーチバック(Teach-back) 目的:口頭での情報伝達を、情報発信側と受け手側双方が確認できるようにする 方法:指示の受け手は、聞いた内容を短く復唱して確認する。 例: 発信側:「この薬を1日1回投与してください。」 受け手側:「1日1回ですね。」 発信側:「はい、1日1回です」 口頭指示が多い場面では面倒でも必須にするとミスが減ります。これは情報発信側が自分の発信した情報が誤っていないかの確認もできるため、とても重要です。獣医療や動物飼育の現場では口頭での指示が多いため、チェックバックを日常にできることが重要になります。 4) SBAR(Situation:状況 / Background:背景 / Assessment:評価 / Recommendation:提案) 目的:引継ぎや報告の標準フォーマット化を図ることで、情報伝達の漏れを防ぎ、短く要点を伝えられます。 例: S:○○は体温が40℃に上がっています。 B:外での運動直後に体温上昇を確認。 A:熱中症の疑いで、積極的に冷却が必要と考えます。 R:冷却処置を開始し、獣医に報告をお願いします。 シフト制で働く人が逐次変わる獣医療や動物飼育の現場では、引継ぎが重要になります。一方で、この引継ぎは個人の判断による作成が主流であるため、個人が重要と思った事柄しか記載されない傾向があります。そこで、こういった引継ぎや報告書のフォーマットを作成しておくことで、必要な情報を簡潔に伝えられるようになるので、引継ぎを作成する側も受け取る側も楽に情報を伝達することが可能になります。 導入・運用のステップ(実務チェックリスト) 以上のように実際の運用方法について簡単ですが整理しました。しかし、これらは個人で取り組むことではありません。もちろん、個人個人が努力するとは重要ですが、やはり組織ぐるみで取り組むことで初めて効果が得られる事柄になります。そこで、組織として導入するためのポイントについて簡単に記載させて頂きます。 ・ トップの巻き込み:院長・場長の明確な方針表明とスタッフへの必要な権限の付与。 ・ 教育と訓練:短いワークショップ+シミュレーション(ロールプレイ)でツールを体得。 ・ 簡潔なルール化:2チャレンジ・CUS・チェックバックを就業規則やマニュアルに明記。 ・ 日常的な仕掛け:朝のブリーフィング、夕方のデブリーフィング、安全ハドル(短い確認)を定例化。 ・ 評価とフィードバック:ヒヤリハット報告の分析、月次での事例共有、改善策の追跡。 ・ 環境整備:発言しやすい雰囲気作り(匿名報告、心理的安全の確保)。 これらの点を少しずつでよいので、組織として取り組んでいけると、組織力・チーム力が高い現場が構築できると考えます。 今まで述べてきた根底にあるのがコミュニケーションの重要です。一方で、コミュニケーションをする際に気を付けた方がよい四つの要点があることも最後に述べさせていただきます。 1.           完全であること:重要事項が漏れていないこと。 2.           誰にとっても理解しやすいこと:専門用語の多用を避け、共通の言葉で伝える。 3.           簡潔であること:無駄を省き、要点だけ伝える。 4.           タイムリーであること:必要なときに必要な情報が届くこと。 最後に 人はミスをする生き物だと認めたうえで、組織としてミスを補完・早期発見する仕組みを設計することが安全管理の本質です。今回紹介したツールはシンプルですが、継続して運用することに意味があります。チーム全員で「私たちが守る」姿勢を作ることが、最も強い安全対策になります。 必要であれば、今回の内容を皆様の組織にお伝えし、導入するご協力も可能です。ご希望があれば遠慮なくお知らせください。

  • チーム力で獣医療・動物飼育現場の安全管理能力を高める(第2回)

    第2回:事故をどう防ぐか — 組織で取り組むべきチームづくり 前回お伝えしたように、人はミスを犯す生き物です。そのミスを個人の責任で片づける状態では、ミスは減らず、人が減るだけの組織になってしまいます。複数の人が集まって組織を作り、何らかの目的や目標を持って組織が運営されるわけですから、人が犯すミスを組織の力で克服していくことが重要になると私は考えています。そこで、今回は組織やチームについて掘り下げて検討してみたいと思います。 1. チームで陥りやすい問題と対策(実務的ポイント) チームで対策を考える場合にまず注意しなくてはいけない点があります。それは、社会的手抜きと呼ばれる点です。これは「リングルマンの綱引きの実験」や「ラタネの拍手の音の実験」などがあります。綱引きや拍手など参加人数が増えると、個人個人の力の入れ具合は参加人数に比例して低下する、というものです。組織力やチーム力を高めるうえで、まずは考慮に入れなくてはいけない点です。 では、どのように克服していけばいいかです。それは、組織目標を個人目標と一致させることが重要であると私は考えます。どのように考えるかと言うと •            組織目標を明確にする •            組織目標に合致するようなチーム毎の目標を定める •            チーム毎の目標に合致するような個人目標を定める このようにすることで、個人の日々の活動がチームのため、組織のために昇華させることが可能になります。一方で、これは概念として理解することは容易いのですが、実施するとなると大変難しい案件になります。特に個人目標の設定に関しては個人個人の価値観が関わることになり、目標設定に苦労する場面が多いと思います。一方で、この「組織↔チーム↔個人」の目標が明確に設定できている組織と言うのは、組織力がとても高く、多くの成果を得られる組織であると言えます。故に、この目標設定に多くの労力や時間を費やすことは、決して悪いことではなく、将来的に多くの果実を組織にもたらすものであると私は考えています。 2.リーダーとリーダーシップの考え方 一般に「リーダー」が「リーダーシップ」を発揮して、チームのメンバーを導いていくと考えがちですだと思います。しかし、TeamSTEPPSの視点ではリーダーシップは行為(他者に影響を与える行為)であり、誰もが発揮でするものです。一方で、リーダーはただの役割だとお考え頂くとよいと思います。 では、「リーダーシップ」とはどのような行為でしょうか。 •            自分の役割を理解し、チームのために積極的に発言する •            他者の模範となる行動をとる •            アサーティブ(相手を尊重しつつ主張する)なコミュニケーションを行う 以上のような行為をチームメンバー全員が行っていくことが求められます。 一方で役職者としてのリーダーは、どのようなことを心掛けて行動するのでしょうか。 •            時と場所により誰もがリーダーになる可能性がある(年齢、職種は関係ない) •            チームの方向性を決める •            意見を発現しやすく、出した意見が否定されない環境を作る •            メンバー間の情報共有を進める •            人と物のマネージメント •            フィードバックを行う場を設ける 以上のような点を心掛けて行動することが重要になります。私たちは常に自分がリーダーになる可能性があり、一方でリーダーでない場合はチームメンバーとして積極的なリーダーシップを発揮することが重要になる、とご理解頂ければと思います。 今回は組織力・チーム力を高める方法について記述しました。次回(第3回/最終回)では、現場で使える具体的なコミュニケーションツール(2チャレンジルール、CUS、チェックバック、SBAR等)と、導入方法・運用のポイントを紹介します。ご興味がありましたら次回もご覧になってください。

  • チーム力で獣医療・動物飼育現場の安全管理能力を高める(第1回)

    第1回:はじめに — 「人は間違える」をどう組織で扱うか(TeamSTEPPSの考え方に学ぶ) 前回は「鍵のかけ忘れ」をテーマに、動物飼育現場で大きな問題になり得る事例を、思い付きではなく、体系的に対策を考える方法のエッセンスについて、河野龍太郎氏の資料をもとに検討しました。 今回は、東京慈恵医科大学附属病院などで導入されている「TeamSTEPPS(チームステップス)」の考え方を軸に、チームで安全管理を高める方法を整理します。TeamSTEPPSは「チームの力で医療安全を向上させるための枠組み」で、動物飼育や獣医療の現場でも学ぶべき点が多く、活用していく必要性がある考え方であると私は考えています。 まず出発点として強調したいのは、「ヒトはミスをする生き物である」という前提です。人間ならではの避けられない特性を整理すると、典型的には以下のようになります。 1.           人は誰でも間違える(ミスは避けられない) 2.           思い込み、状況に左右される(先入観で判断しやすい) 3.           聞きたいことだけが聞こえ、聞いていることしか聞こえない(選択的注意) 4.           見たいものだけが見え、見ているものしか見えない(選択的視覚) 5.           記憶には限界があり、注意は維持できない 6.           正しい、安全であると思いたいための自分に都合の良いストーリーを作ってしまう(バイアス) 7.           一度「正常」と判断すると再確認をしない これらの点はどなたでも思い当たる事柄があるのではないでしょうか。かく言う私も様々な過去の失敗事例の記憶が蘇ってきます。 これらの点は単なる「性格の問題」ではありません。人間の認知の仕組みから生じる普遍的な現象です。突き詰めると「人間はミスをする生き物である」と認識することが最初の1歩になります。そして、人はミスをする生き物であるがゆえに、そのミスを個人の責任だけに帰するのではなく、組織としてどのようにミスを防ぎ、捕捉し、リカバーするかを設計することが重要である、という認識を持つことが大変重要になってきます。 医療や動物飼育の現場で事故・ヒヤリハットが起こる主な要因 医療現場での事故やヒヤリハットを整理すると、次のようなものが挙げられます。 •            業務量の急変や過重負荷 •            疲労 •            中断や割り込み(作業の断片化) •            複数作業の同時進行(マルチタスク) •            観察不足・情報収集の不十分さ •            引き継ぎ(ハンドオーバー)の不完全さ •            コミュニケーション不良(黙認・遠慮・上下関係) •            手順・ルールの不履行 •            過度の職業的忠誠心や年功序列や職種序列に基づく抑制的文化(意見が出ない) •            「自分だけで何とかしよう」とする考え方 •            危険性の高い作業が多い これらの問題は医療現場に限らず、獣医療や動物飼育の現場でも極めて一般的に見られる事柄です。私が動物に関わる現場においても数々の思い当たる事柄がありました。一方で、こういった事柄を個人の責任に帰結してしまいやすい組織が多いことも事実です。しかし、これらの事柄は「個人のモラルや能力だけで解決できるものではありません!」。組織として対策が必要です。そのために重要になってくるのが「チーム力」あるいは「組織力」といってもいいかもしれませんが、本質の理解と対策の実行になります。 次回(第2回)は、組織としての対策(チームの作り方、リーダーシップの在り方)を掘り下げます。ご興味がありましたら、また来週もご覧になってください。

  • 動物飼育現場における安全管理 — 鍵の閉め忘れを中心に(後編)

    前編に続き、今回はエラーが発生してしまった後にどう被害を最小化するか、つまり「エラー拡大防止」と「訓練/組織づくり」について整理します。現場で実際に役立つ具体策を中心に書きます。 3)エラー拡大防止(発生後の被害を小さくする) エラー拡大防止は大きく二つの柱で考えます。 1. 多重のエラー検出策を設ける(発見を早める) 2. エラーに備える(準備と訓練で対応力を高める) (1)多重のエラー検出策 「検出」は自分で気づく方法と自分以外で検出する方法に分かれます。 自分で気づかせる策 • 指差呼称や最終確認ルーチンを徹底する(扉を閉めた後、鍵の位置を確認し声に出す)。 • 作業記録のホワイトボードやチェックリストに「開閉した扉」を記入し、退室前に再確認する習慣を付ける。 • 扉や鍵の状態を視覚的に示すフラグ(色・カード)や、鍵にタグを付けるなどの運用。 自分以外で検出する策(人・機械) • 別の人に最終確認してもらう「ダブルチェック」体制(コストは低いが人的リソースが必要)。 • センサーやアラームの導入:扉が開いたまま一定時間経過したら音で知らせる、または扉状態をスマホへ通知する南京錠等の製品利用。 o 例:扉開放センサー+中央監視システム、スマート南京錠の通知機能など。 • 監視カメラの位置・死角を見直し、異常を早期に発見できる仕組みを作る。 機械化は有効だが費用がかかる。現実的には低コストの運用ルール(人による確認)と、徐々に機械的対策を導入するハイブリッドが現場には向いています。 (2)エラーに備える:準備と訓練 発生時に被害を最小化するための最も重要な要素は訓練です。以下を具体化します。 • 緊急対応マニュアルの整備:動物脱出時の初動(警報・隔離・通報フロー・責任者の指示系統)を明文化する。 • 定期的な訓練(模擬演習):実際にスタッフが現場で動いて役割を確認する。机上のチェックだけで終わらせない。 • シナリオ演習:動物種別(逃亡しやすい動物/人に危害を加える恐れのある動物)を想定した複数のシナリオで訓練する。 • 振り返りと改善:訓練後は必ずデブリーフィングを行い、問題点を記録して手順を改訂する。 航空・医療分野が示すように、訓練の反復と不測事態への備えを日常化することが安全性の核心です。動物飼育の現場では「普段はうまくいっているから大丈夫」と思いがちですが、想定外の事象はいつでも起きます。特に人がコントロールしにくい野生的な個体がいる施設では、訓練の重要度は高まります。 組織風土とオーダーメイド対策 安全対策は場ごとに最適化する必要があります。施設の規模、動物の種別、スタッフ数、予算、設備によって「どこを強化するか」は変わります。 • 小規模チームではマンネリや慣れがリスクになるため、外部の視点(コンサルタントや他施設の職員)を定期的に入れると効果的です。 • 組織風土として「安全優先」を根付かせるには、ルールを作るだけでなく日常的に実践/褒める文化を作ることが重要(ルール順守者を評価する等)。 • 技術的対策(センサー等)と人的対策(訓練・ダブルチェック)をセットで検討すること。 現場で使える簡易チェックリスト(例) • 扉を開ける前に:作業目的・動線・持ち物を確認。 • 扉を開けたら:作業は一連で済ませる(複数回の出入りを避ける)。 • 退室前に:指差呼称で「鍵閉→確認」声出し。ホワイトボードに記入。 • 退室後:数分後に扉の状態確認(別の担当者がチェックできれば望ましい)。 • 月次:訓練の実施と振り返り、設備(鍵・センサー)の点検。 チェックリストは簡便なもの、そして常に携帯できるようにしておくことが大切です。 結び:オーダーメイドの安全対策を一緒に作りましょう 今回、鍵の閉め忘れを切り口に、発生防止と拡大防止、そして訓練や組織づくりの重要性を整理しました。重要なのは[太字]「現場ごとに何を最優先すべきか」を判断して、実行可能な方法で仕組み化する」[/太字]ことです。 小規模チームでは内部だけで解決しづらいことも多く、外部の第三者を「スパイス」として入れることで、新しい視点や仕組みが入りやすくなります。私も現場経験と安全管理の知見を元に、そうしたオーダーメイドの支援ができますので、ご相談がありましたらお気軽にお声がけください。

  • 動物飼育現場における安全管理 — 鍵の閉め忘れを中心に(前編)

    今日は、動物を飼育する現場での安全管理についてお話しします。話の骨子は、医療安全推進機構の河野龍太郎氏の資料を参考に、私の現場経験もまじえてまとめたものです。具体例をもとに考えるのがいちばん有効だと考え、今回は「鍵の閉め忘れ」に焦点を当てて詳しく分析します。 1)問題の構造:三段構えで考える 鍵の閉め忘れが原因で事故に至るまでの構造はシンプルです: 1. 作業を行う(例:掃除、餌やり、点検) 2. 鍵を閉め忘れる(エラー発生) 3. 事故が発生する(エラーの拡大) したがって、対策は大きく二段構えで考える必要があります。 A. エラー発生防止(鍵を閉め忘れないようにする) B. エラー拡大防止(閉め忘れてしまっても事故につながらないようにする) まずは A の「エラー発生防止」について掘り下げます。 2)エラー発生防止:作業数を減らす & 発生確率を下げる 鍵の閉め忘れを防ぐには、次の二つが柱になります。 • (A1)作業数を減らす • (A2)エラー発生確率を下げる A1. 作業数を減らす(=ミッション数の削減) 「鍵を開けて入る機会」を減らすことが根本的な対策です。現実的には動物の世話で人が入らねばならない場面は多いため、次のような工夫が考えられます。 • 人が入って行う作業を1回で済ませるように工程を再設計する(掃除なら一連の動作を集約する等)。 • 周辺作業の統合(例:清掃の動線を短くし、複数の清掃工程を一度に行うようにする)。 • 最終的には「人が入らない方法」を検討(自動掃除機や外部から作業できる設備配置) — 理想だが現実的制約あり。 極端な解:人と動物の空間を完全分離する、は理想だが現実的でないため、関連する作業の数を減らす実務的な措置が現実解になります。 A2. 発生確率を下げる(=ヒューマンファクター対策) 発生確率を下げるために、次の6つの観点から対策を考えます(原則を整理して分かりやすく表現します)。 1. わかりやすくする → 開いている/閉まっている状態が誰にでも直感的に分かるようにする。 2. やりやすくする → 鍵の操作・確認が簡単にできる導線・道具にする。 3. 必要なものを近くに置く(近接配置) → 必要器具や確認ツールを手元に置く。 4. 認知・予測を助ける → 指差呼称やチェックリストで「やるべきこと」を能動的に確認させる。 5. 安全を優先する文化をつくる → 業務指示・組織風土として安全最優先のルールを徹底する。 6. できる能力を持たせる(教育) → スキルの向上、動物の行動理解、状況判断力を育てる。 特に重要なのは ⑥ 能力を持たせること と ⑤安全優先の文化 です。 具体的には: • 従業員が掃除や餌やりを安全に行える技能があること。 • 動物の行動や習性を熟知し、危険兆候を見逃さない観察能力を持つこと。 • 鍵の操作・確認を確実にできる訓練があること。 組織としては、例えば以下のようなルールを日常化します: • 動物飼育エリアに入っている間は、緊急以外の無線・電話は取らない。 • エリア内作業中に外から不用意に声をかけない(邪魔にならない仕組み)。 • 「やるべき一連の動作」の前後に必ず指差呼称を行うことを標準作業にする。 指差呼称は研究的にもエラー低減に効果があることが知られており、視覚+動作で認知の確度を上げます。さらに、 作業中の認知リソースを浪費させる要因(飲酒、強い個人的悩み、作業中の割り込み電話など) はエラー発生確率を大きく上げるため、これらを管理する仕組み(勤務管理や割り込み制御)も重要です。 前編のまとめ(次回へのつなぎ) 前編では「鍵の閉め忘れ」を起こさないための発生防止に重点を置いて整理しました。ポイントは • 作業数を減らす(工程の集約/不要作業の排除) • 発生確率を下げるための能力育成と組織文化の醸成、および具体的施策(視覚・聴覚の合図、指差呼称など) 後編では、実際に閉め忘れてしまった後の『エラー拡大防止』(多重の検出策、訓練、組織風土、現場ごとのオーダーメイド対策)について詳しく述べ、最終的なまとめと現場で取り組める実務的なチェックリストを提示します。次回もぜひお付き合いください。 (後編へ続く)

  • 「授業に来ない・寝る」を防ぐ!専門学校で実践したスマホ活用授業のリアル

    私は現在、東京の動物専門学校で2校、非常勤講師をしています。実務に近い授業を通して気づいたことがいくつかあるので、今日はその中から特に重要だと感じた「出席」と「授業中のスマホ活用」について整理してお伝えします。 出席しないことは大きな損失になる 専門学校は単に知識を得る場ではなく、「職場に出るための練習場」でもあります。授業で得る情報、実技の訓練、人間関係の形成――これらは社会で働くうえで不可欠な要素です。しかし、学校に来ないということは、これらすべての機会を失うことを意味します。欠席が続く学生は、単に授業を逃すだけでなく、将来の選択肢を狭めてしまう恐れがあります。 居眠りは「インプットがゼロ」になる 授業に来ていても居眠りをしていれば、学びはほぼゼロです。教える側は魅力的な授業を心がけるべきですが、それだけでは解決しないケースも多く、学生側のモチベーションや生活リズムの問題が背景にあることもあります。したがって「出席させる」「授業中に起きてもらう」ことが、授業を行う側が意識する大切な第一歩になります。 なぜ「スマホを許可する」ことにしたのか そこで私が試しているのが、授業中のスマホ利用を前提にした運用です。理由はシンプルです。 •スマホは情報検索やコミュニケーションの即時ツールであり、今や人間にとって外付けの記憶装置や作業ツールの役割を果たしています。 •今の学生は自然にマルチタスクを行っています。スマホを片手に調べ物をしながら友人と会話したりすることを自然に行っています。 •授業中にスマホを使うことで、少なくとも居眠りは減り、授業の一部が耳に入る可能性が高まります。インプットが「ゼロ」ではなく「0.1」でも積み重なれば学びになります。 •また、課題提出や情報収集は検索やAIの助けで効率化できるため、暗記偏重ではない学習スタイルが実現可能です。 スマホ活用の利点(実感している点) •わからないことをその場で検索できる(理解の即時補完)。 •AIを活用して分かりやすい文章を生成したうえで、内容を自分で検討・編集する練習ができる。 •分からないことがあってもスマホで直ぐに調べられるので、授業中に指名されても答えに窮することが減る。結果として、生徒の安心感が高まり、授業参加への心理的ハードルが低下する。 •最終的には欠席・居眠りが減り、授業への最低限の接続が保たれる。 実践例(私が導入している運用案) スマホを活用した授業の例としては: •スマホを使ったミニ課題(検索で条件を満たす根拠を見つける、クイックレポート作成など)を定期的に入れる。 •グループワークでの情報収集や記録はスマホを前提に進める。 こうしたルールにより、「スマホ=邪魔」ではなく「学びを補完するツール」として扱えるようにしています。 注意点:教師の役割は依然として重要 スマホやAIに依存させてしまうと、批判的思考や情報の取捨選択能力が育ちにくくなります。したがって教師は次の点に責任を持つ必要があります。 •情報の評価方法(信頼性の見極め方)を教える。 •AIや検索結果の活用ルールと倫理(盗用・剽窃への対処)を明確に伝える。 •授業の質(学習目標の明確化、フィードバックの提供)は保ち続ける。 おわりに 結論として、「出席させること」と「授業中に完全にスマホを排除しないこと」は相互に補完し合う現実的な方策だと考えています。若い世代の習慣や強みを否定するのではなく、それを学びに取り込むことで、欠席や居眠りという表面的な問題を減らし、将来に必要な情報収集力・コミュニケーション力を育てることができる──私はそう実感しています。

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