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なぜキング王国は滅びたのか?3つの決断で分かる組織の勝敗(前編)

  • 執筆者の写真: Nobuhide Kido
    Nobuhide Kido
  • 13 時間前
  • 読了時間: 8分

漆黒の空の下にそびえ立つ巨大な城。その玉座の間の中央に王は座っていた。目の前には、眼付きの鋭い年老いた男がひれ伏している。

「デーモン殿下。あちこちに放っております手下どもが良い働きをしているようです。もう間もなく、世界は殿下の手の中に」

「わーーっはっはっは。そうかそうか。よくやっておるな。もう少しだな。残るはキング王国か」

野太い声が部屋全体にこだまする。

「ははー。おっしゃる通りでございます。キング王国も殿下の手にかかっては、ひと捻りかと。へっへっへっへ」

卑屈な笑いが部屋の隅に響く。

「油断するでないぞ。キング王国は兵隊がいると聞く。やるならしっかり準備をしてからではないとな」

「さすが、殿下。おっしゃる通りでございます。まずは、キング王国の情報収集に手下に向かわせましょう」

「そうだな。あとは、攻め込む準備を始めるのだ」

「おっしゃる通りに致します。手下どもの中には魔力が弱い者も交じっておりますゆえ、そやつらを今一度鍛えなおしましょう」

「もちろんだ、すぐにやれ。兵隊長によく申し付けておけ。あとは、武器もしっかり準備するんだ。工場でふんだんに作るように伝えておけ。わかったかー!」

「仰せのままに。デーモン殿下の世界征服の野望を実現すべく、手下ども全てに殿下のお考えを叩きこんでおきます」

「わーーっはっはっは。それでよい、それでよい。世界がわしの下にひれ伏す日は近いぞ」

年老いた男は地面に頭を擦りつけながらひれ伏した。

「恐れ多くも、デーモン殿下」

「なーーんだ!まだいるのか!早く兵隊長に連絡してまいれ」

「申し訳ございません。武器を作るために材料を買わなくてはなりません。いかがすればよいでしょうか」

「そんなことか。我一族が今まで貯めておいた財宝を使うのじゃ。あれこそ、この時のためにあるものだ」

「ありがたき幸せ」

「では、早く作業を開始せよ!わが人生最大の目標である世界征服まであと一息だ!」

年老いた男は再び地面に頭を擦りつける。おでこの辺りが赤くなっている。

「恐れ多くも、デーモン殿下」

「なーーんだ!まだいるのか!あと何があるというのじゃ」

「申し訳ございません。あちこちに散らばっておる手下どもに、食料を届けなければ、奴らは戦い続けられないと申しております。いかがいたしましょうか」

「そんなことか。それなら、農地での生産量を増やせるよう取り計らえ。金ならいくら使っても構わん。腹が減っては戦ができんからな。手下もドンドン増やせ!」

「ありがたきお言葉。直ぐにでも食料長に伝えてまいります」

「わーーっはっはっは。直ぐにとりかかれ!世界征服を実現して、このデーモン様の威光を世界の隅々まで届けるのじゃ!早くいけー!」

「ははー」

男は地面に頭を擦りつけひれ伏したまま、玉座の間から退出した。そしてすぐさま、兵隊長と食糧長を呼びつけた。

「よいな、デーモン殿下のご意向だ。直ぐに取り掛かれ。兵隊長は、キング王国の偵察、手下の訓練、武器の生産だ。食糧長は食料の生産増加、手下どもに食料を届けるだ。あとはー、新しい手下のリクルートはわしがする。二人とも、国内の全てのものに、殿下の野望とお考えをしっかり伝えるのじゃ!よいな!」

「仰せのままに」

兵隊長と食料長はすぐさま自分の持ち場に向かって走り出した。

初老の男は二人の後姿を見守りながら、一人卑屈な笑みを浮かべた。


王の決断1:何もしない(現状維持の罠)

青空の下に大きな城がそびえ立つ。その玉座の間の中央には王が座っていた。目の前にはぽかんとした顔つきの初老の男が座っていた。

「今日もいい天気ですねー。王様」

「そうじゃなー。良い天気じゃなー。今日は何をしようかね」

「今日は、久しぶりに城下の民に会いに行きましょうか」

「そうじゃなー。たまには、そうするか」

二人で窓から見える空を眺めていると、玉座の間の扉から一人の兵士が入ってきた。

「王様!」

「なんじゃ、どうした。少し落ち着いてしゃべりなさい」

初老の男がたしなめる。

「王様、デーモン国の勢力が拡大しております。このキング王国にももう少しで手が及びそうです。なにか対策が必要かと」

兵士はなおも大きな声で叫ぶ。

「あー、うるさいうるさい。そんなことは王は分かっておられる。案ずるでない」

初老の男が言うと

「あー、そのことか。心配するでない。わしも知っておる」

王様も椅子にのんびりと座り直しながら言った。

「しかし、王様。デーモン国の連中はなにやら見たこともない魔法を使っているようです。キング王国を守るためにもなにか対策をした方がよいかと」

「魔法だと。そんなものがあるはずなかろう。きっとうわさ話に尾ひれがついとるだけじゃ。心配するな」

初老の男が言うと、王も

「あー、心配するな。わが王国には立派な軍隊がいる。かつてわしが隣国を屈服させたときの軍隊じゃ。間違いはあるまい。デーモン国の連中など一瞬で蹴散らしてくれよう」

「さすが、王様。王の軍隊を使えば、デーモン国などあっという間に滅びましょうぞ」

初老の男も嬉しそうに話をしながら、さらに続けた。

「なんでもデーモン国は我々の王国の近くまで領地を広げてきたのに、ここにきて足踏みをして動きが止まっているとも聞く。きっと我々の王国を恐れて手が出せないでいるのでしょう」

「わーーっはっはっは。そうかそうか。我王国を前にして恐れをなしておるのだな。そんな連中は放っておけばよかろう」

「さようでございますな」

「しかし、王様。連中がいつ攻めてくるともわかりません。何か対策を」

「心配するな。我王国の軍隊はみな優秀じゃ。わしの掛け声1つで直ぐに蹴散らしてくれようぞ」

王様の笑い声が響く。


その時、玉座の間の扉が急に大きく開かれた。

「お待ち下され、これより先は王の間ゆえに、勝手に入ることは・・・」

そういう兵士を押しのけて、4人の若者が入ってきた。

「王様、そのお考え改めた方がよいですよ!」

若者の1人が大きな声を出す。

「なんじゃ、なんじゃ、何者じゃ」

王様が聞き返すと、兵士の一人が言った。

「この者たちは、自分達を勇者だと言ってます」

「勇者だと。戯けたことを。その戯けどもがわしになんの用じゃ」

「は!なんでも、こやつらがデーモンを倒すと言っております」

「何を言っておるんじゃ。そんな戯けた話をわしが信じると思うか。さっさとお帰りいただきなさい」

王様は手をパッパと振り払う動作をした。すると若者の一人が声をあげた。

「王様、よくお聞きください。デーモン国の連中は魔法を使っております。今のキング王国の軍隊では彼らの魔法には太刀打ちできません。しかし、我々の中には魔法使いが2人もいます。我々勇者一行がデーモンを退治してくれましょうぞ」

「何を言っておるのじゃ。お前ら4人で何ができると言うのじゃ。我国には優秀な軍隊がおるのじゃ。案ずるには及ばん」

初老の男がそう言うと、王に目を向けた。王は帰らせるようにと初老の男に合図を送った。

「王様もそのようにお考えだ。さっさと帰られよ」

初老の男が兵士と共に、勇者と名乗る4人組を部屋から追い出す。

「王様、後で後悔しても知りませんよ。キング王国を救えるのは我ら4人の勇者だけですよ」

玉座の間の扉は閉まった。

初老の男が王様の下に戻りながら言った。

「やれやれ、最近はあの手の若い連中が増えて困りますのー」

「まーよいよい。勝手に言わせておけばよいのじゃ。どれ、天気もいいことだし、民に会いに行こうではないか」

「ははー」

王様が先頭に立ち、1歩後ろから初老の男がついて歩いた。


「デーモン殿下」

「なーーんだ。わしは今、支配地の者たちに向けたメッセージを作っているんだ。じゃまするな」

「申し訳ありません。只今、キング王国に偵察に行っていた者が帰ってまいりました」

「それを早く言わんか!」

「申し訳ありません。その者によりますと、キング王国は昔ながらの軍隊しかおらず、国王も我々を全く警戒していないとのことでございます」

「そうか!よくやった。この瞬間をわしは待っておったのじゃ。1年間も準備に準備を重ねてきたのじゃ。わーーっはっはっは。手下どもは十分か」

「はい。1年間より2倍増えております」

「武器は」

「はい、1年間より3倍増えております」

「食料は」

「はい、1年前より5倍増えております」

「よーし、準備は整った。全員今すぐ集めて、攻撃だ!いよいよ、わしの世界征服の目標が実現するぞ。わーーっはっはっは!」

「殿下の夢が間もなく実現しますな。へーっへっへっへ」

初老の男も薄汚く笑った。



「王様!」

「どうしたのじゃ。わしは今、お昼を食べているところじゃぞ。後にはできんのか」

ぽかんとした初老の男が慌てて玉座の間に入ってきた。

「大変です!デーモン国がキング王国に攻め込んでまいりました」

「なんじゃと!ついに来をったな。いよいよ、その薄汚い本性を現しおったなデーモンめ。よし、すぐさま軍隊を集めて戦いの準備をせよ」

「了解いたしました、直ちに兵隊長に伝えてまいります」

初老の男が慌てて部屋から出ていった。

「デーモンめ、このキング王が成敗してくれるわ」

そう言いながら国王は昼食を食べ続けた。

夕方になると、初老の男と兵隊長が慌てて部屋に入ってきた。

「王様!」

初老の男が声をかける。

「なんじゃ、もうデーモンをやっつけたか」

「いえ、その逆でございます」

兵隊長が声をあげる。

「なんじゃ」

「デーモン国の連中は見たこともないような魔法なるものを使って攻め込んできていて、我々の旧式の軍隊では歯が立ちません。前線が崩壊しました」

「なにお!そんなはずはなかろう。魔法なるものがなんなのか分からぬが、わが意を汲んでいる軍隊が、そう簡単に諦めてしまうことなどなかろう」

「いえ、その逆でございます」

「なんじゃ。兵士たちは魔法を前にして、我先に逃亡してしまい、その結果ほとんど戦わずして前線が崩壊しました」

「なにお!そんなはずなかろう。わが軍だぞ。おかしい、そんなはずはない」

王様は部屋の中を歩き始めた。

「して、デーモンの連中は今どこにおるのじゃ」

「は!もうこの城を取り囲んでおります」

「なにお!」

王様が慌ててテラスに飛び出すと、城の周りはデーモン国の連中に取り囲まれていた。

「万事休すじゃ」

王様は地面にへたり込んでしまった。

デーモン国の魔法が城を襲い始めた中、王様にある時の記憶が蘇っていた。

「あの時の若者に任せておれば、こんなことにならなかったろうに・・・」


(つづく)

 
 
 

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