チーム力で獣医療・動物飼育現場の安全管理能力を高める(第2回)
- Nobuhide Kido
- 10月16日
- 読了時間: 3分

第2回:事故をどう防ぐか — 組織で取り組むべきチームづくり
前回お伝えしたように、人はミスを犯す生き物です。そのミスを個人の責任で片づける状態では、ミスは減らず、人が減るだけの組織になってしまいます。複数の人が集まって組織を作り、何らかの目的や目標を持って組織が運営されるわけですから、人が犯すミスを組織の力で克服していくことが重要になると私は考えています。そこで、今回は組織やチームについて掘り下げて検討してみたいと思います。
1. チームで陥りやすい問題と対策(実務的ポイント)
チームで対策を考える場合にまず注意しなくてはいけない点があります。それは、社会的手抜きと呼ばれる点です。これは「リングルマンの綱引きの実験」や「ラタネの拍手の音の実験」などがあります。綱引きや拍手など参加人数が増えると、個人個人の力の入れ具合は参加人数に比例して低下する、というものです。組織力やチーム力を高めるうえで、まずは考慮に入れなくてはいけない点です。
では、どのように克服していけばいいかです。それは、組織目標を個人目標と一致させることが重要であると私は考えます。どのように考えるかと言うと
• 組織目標を明確にする
• 組織目標に合致するようなチーム毎の目標を定める
• チーム毎の目標に合致するような個人目標を定める
このようにすることで、個人の日々の活動がチームのため、組織のために昇華させることが可能になります。一方で、これは概念として理解することは容易いのですが、実施するとなると大変難しい案件になります。特に個人目標の設定に関しては個人個人の価値観が関わることになり、目標設定に苦労する場面が多いと思います。一方で、この「組織↔チーム↔個人」の目標が明確に設定できている組織と言うのは、組織力がとても高く、多くの成果を得られる組織であると言えます。故に、この目標設定に多くの労力や時間を費やすことは、決して悪いことではなく、将来的に多くの果実を組織にもたらすものであると私は考えています。
2.リーダーとリーダーシップの考え方
一般に「リーダー」が「リーダーシップ」を発揮して、チームのメンバーを導いていくと考えがちですだと思います。しかし、TeamSTEPPSの視点ではリーダーシップは行為(他者に影響を与える行為)であり、誰もが発揮でするものです。一方で、リーダーはただの役割だとお考え頂くとよいと思います。
では、「リーダーシップ」とはどのような行為でしょうか。
• 自分の役割を理解し、チームのために積極的に発言する
• 他者の模範となる行動をとる
• アサーティブ(相手を尊重しつつ主張する)なコミュニケーションを行う
以上のような行為をチームメンバー全員が行っていくことが求められます。
一方で役職者としてのリーダーは、どのようなことを心掛けて行動するのでしょうか。
• 時と場所により誰もがリーダーになる可能性がある(年齢、職種は関係ない)
• チームの方向性を決める
• 意見を発現しやすく、出した意見が否定されない環境を作る
• メンバー間の情報共有を進める
• 人と物のマネージメント
• フィードバックを行う場を設ける
以上のような点を心掛けて行動することが重要になります。私たちは常に自分がリーダーになる可能性があり、一方でリーダーでない場合はチームメンバーとして積極的なリーダーシップを発揮することが重要になる、とご理解頂ければと思います。
今回は組織力・チーム力を高める方法について記述しました。次回(第3回/最終回)では、現場で使える具体的なコミュニケーションツール(2チャレンジルール、CUS、チェックバック、SBAR等)と、導入方法・運用のポイントを紹介します。ご興味がありましたら次回もご覧になってください。



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