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動物飼育現場における安全管理 — 鍵の閉め忘れを中心に(前編)

  • 執筆者の写真: Nobuhide Kido
    Nobuhide Kido
  • 2025年9月25日
  • 読了時間: 4分

今日は、動物を飼育する現場での安全管理についてお話しします。話の骨子は、医療安全推進機構の河野龍太郎氏の資料を参考に、私の現場経験もまじえてまとめたものです。具体例をもとに考えるのがいちばん有効だと考え、今回は「鍵の閉め忘れ」に焦点を当てて詳しく分析します。



1)問題の構造:三段構えで考える



鍵の閉め忘れが原因で事故に至るまでの構造はシンプルです:

1. 作業を行う(例:掃除、餌やり、点検)

2. 鍵を閉め忘れる(エラー発生)

3. 事故が発生する(エラーの拡大)

したがって、対策は大きく二段構えで考える必要があります。

A. エラー発生防止(鍵を閉め忘れないようにする)

B. エラー拡大防止(閉め忘れてしまっても事故につながらないようにする)



まずは A の「エラー発生防止」について掘り下げます。



2)エラー発生防止:作業数を減らす & 発生確率を下げる


鍵の閉め忘れを防ぐには、次の二つが柱になります。

• (A1)作業数を減らす

• (A2)エラー発生確率を下げる


A1. 作業数を減らす(=ミッション数の削減)

「鍵を開けて入る機会」を減らすことが根本的な対策です。現実的には動物の世話で人が入らねばならない場面は多いため、次のような工夫が考えられます。

• 人が入って行う作業を1回で済ませるように工程を再設計する(掃除なら一連の動作を集約する等)。

• 周辺作業の統合(例:清掃の動線を短くし、複数の清掃工程を一度に行うようにする)。

• 最終的には「人が入らない方法」を検討(自動掃除機や外部から作業できる設備配置) — 理想だが現実的制約あり。

極端な解:人と動物の空間を完全分離する、は理想だが現実的でないため、関連する作業の数を減らす実務的な措置が現実解になります。


A2. 発生確率を下げる(=ヒューマンファクター対策)

発生確率を下げるために、次の6つの観点から対策を考えます(原則を整理して分かりやすく表現します)。

1. わかりやすくする → 開いている/閉まっている状態が誰にでも直感的に分かるようにする。

2. やりやすくする → 鍵の操作・確認が簡単にできる導線・道具にする。

3. 必要なものを近くに置く(近接配置) → 必要器具や確認ツールを手元に置く。

4. 認知・予測を助ける → 指差呼称やチェックリストで「やるべきこと」を能動的に確認させる。

5. 安全を優先する文化をつくる → 業務指示・組織風土として安全最優先のルールを徹底する。

6. できる能力を持たせる(教育) → スキルの向上、動物の行動理解、状況判断力を育てる。


特に重要なのは ⑥ 能力を持たせること と ⑤安全優先の文化 です。

具体的には:

• 従業員が掃除や餌やりを安全に行える技能があること。

• 動物の行動や習性を熟知し、危険兆候を見逃さない観察能力を持つこと。

• 鍵の操作・確認を確実にできる訓練があること。

組織としては、例えば以下のようなルールを日常化します:

• 動物飼育エリアに入っている間は、緊急以外の無線・電話は取らない。

• エリア内作業中に外から不用意に声をかけない(邪魔にならない仕組み)。

• 「やるべき一連の動作」の前後に必ず指差呼称を行うことを標準作業にする。


指差呼称は研究的にもエラー低減に効果があることが知られており、視覚+動作で認知の確度を上げます。さらに、作業中の認知リソースを浪費させる要因(飲酒、強い個人的悩み、作業中の割り込み電話など)はエラー発生確率を大きく上げるため、これらを管理する仕組み(勤務管理や割り込み制御)も重要です。


前編のまとめ(次回へのつなぎ)

前編では「鍵の閉め忘れ」を起こさないための発生防止に重点を置いて整理しました。ポイントは

• 作業数を減らす(工程の集約/不要作業の排除)

• 発生確率を下げるための能力育成と組織文化の醸成、および具体的施策(視覚・聴覚の合図、指差呼称など)

後編では、実際に閉め忘れてしまった後の『エラー拡大防止』(多重の検出策、訓練、組織風土、現場ごとのオーダーメイド対策)について詳しく述べ、最終的なまとめと現場で取り組める実務的なチェックリストを提示します。次回もぜひお付き合いください。


(後編へ続く)


 
 
 

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